「顔が見えない住人の家」をつくる
中目黒の小さなリノベーション会社coto。
今回はcotoがこれまで手掛けた、再販リノベーションの実例を
ちょっと変わった目線で、ご紹介していきたいと思います。
再販リノベーションについて知りたい方は、前回の記事(vol.2)へどうぞ!
この物件には、誰が住む?
再販リノベーションが一般的なリノベーションと大きく異なる点は、
「住む人(=物件購入者)が決まっていない状態で設計・デザインをすること」です。
そのため、再販リノベではcotoが住人をイメージして設計を行います。
想像上の住人のために、間取り・色・素材・小さなパーツまで全体をデザインするのです。
ここからは、ご紹介するcotoの再販リノベの実例が
『どんな人が住むことをイメージして、デザインしたのか?』
を想像しながら、ご覧いただきたいと思います!
58㎡に何人で暮らす!? 再販リノベ事例1
最初にご紹介する事例は、横浜市のリノベーション物件。
広さは、58㎡と比較的コンパクトなお部屋です。
元のリビングダイニングの広さは7畳ほどで少し狭さを感じる間取りでした。
この物件の間取り変更の大きなポイントは、廊下をなくしてリビングと一体にしたこと。
「コンパクトであればあるほど、廊下のスペースを無くすのが効率の良い間取りのコツ」
と、設計したスタッフは言います。
キッチンも対面式にして、リビングダイニングと繋がるようにしました。
リビングダイニングは8.6畳まで広がり、
ダイニングテーブルと小さめのソファとテーブルを置ける広さです。
リビングと隣り合っていた6畳の和室を洋室にしているので3枚引きの扉を開け放して使えば
体感できるLDKの広さは、なんと16畳以上!
さて、この物件に住みたくなるのはどんなご家族でしょうか?
cotoがイメージしたのは「小さなお子さんがいる若いご夫婦」です。
お子さんが小さいうちはリビングを広く使い、
子供部屋が必要になったときには、リビングの隣の部屋を使って
2人の子供の個室を確保しながら、4人家族で暮らせます。
明るい色のアクセントカラーを取り入れているのも、若いご夫婦に気に入ってもらえるポイント。
58㎡の広さでも、豊かなファミリー向けのお部屋になりました。
海まで徒歩8分の夢の暮らし 再販リノベ事例2
次にご紹介する事例は、鎌倉の物件。
海まで歩いて8分の立地にある、81㎡のマンション物件です。
無垢フローリングや白い板張りの壁に、さわやかなブルーの扉。
壁のアクセントにアンティーク風のマリンランプ(船舶照明)を取り付けています。
水まわりは、清潔感ある白を基調としたインテリアです。
実はこの物件も、リノベーション前後で間取りは大きく変えていません。
設備の移動もキッチンの向きを変更した程度です。
でも、重要なところをひとつ変えています。
それは「玄関の土間」!
一般的な広さだった土間の奥行きを2mほどに広げているので、
玄関には自転車を難なく置くことができます。
そして、既存のWICは納戸にして、サーフボードを置けるように…
もうお分かりですよね、イメージしている住人は
「サーフィンが好きなパパとその家族」です。
鎌倉では、自転車にサーフボードを載せて海へ向かう地元の方をよく見かけます。
今回は「そんな暮らしがしたい!」と、鎌倉で物件を探している方がターゲットでした。
狙い通り、海のそばで暮らす夢を持つご家族に購入いただけたようです。
都会の大人の隠れ家 再販リノベ事例3
最後にご紹介する事例は、渋谷区の駅から徒歩4分のマンション、46㎡の物件です。
コンクリート表しのラフな質感の天井に、
オリジナルで造作した対面キッチンのあるワンルームです。
リノベーション前の間取りも、ワンルーム。
窓が少なく、使い方を迷うほどの奥行きがあるお部屋でした。
リノベーション後は玄関の土間を広くし、大きなシューズインクロークをつくりました。
靴やコート、趣味のものもたっぷり収納できます。
お風呂や洗面、トイレは独立させ、それぞれのスペースを確保。
キッチンは大きめの対面式で、広々と料理を楽しめます。
変形した部屋の形状を生かしたカウンターデスクも造作。
窓側にはベッドルームを配置し、窓からの光がリビングにも届くよう低い壁で仕切っています。
全体を黒やこげ茶のシックな色合いでまとめ、床はアカシアの無垢材。
トイレのタオル掛けにもアイアンのものを選ぶなど、
細かいところもこだわってセレクトしました。
…この物件、どんな住人の暮らしをイメージしてデザインされているか、わかりましたか?
答えは、「便利な立地に住みながら、暮らしを楽しみたい男性の一人暮らし」です。
とても人気が出た物件でしたが、最終的に購入した方は女性だったとか…!?
意外なターゲットに刺さることがあるのも、再販リノベーションの不思議なところです。
住人の要望をどこまでイメージできるか?
「こんな場所なら、こんな人が住みたいだろうな」
「こんな人なら、こんな暮らしがしたいだろうな」
「こんな暮らしがしたい人は、こんなインテリアが好きだろうな」
住人が決まっていない物件でも、具体的にイメージを膨らませながら
cotoはプランニングとデザインをしています。
再販リノベーションでも、住む人が居るリノベーションでも
言葉にならない要望をカタチにしていくのはとても大切なことです。
カトウ(ライター)
「家がほしい人」と「建築のプロ」をつなぐ仕事を手掛けるARCHI CONCIERGE(アーキコンシェルジュ)。
住まいに関する記事の執筆のほか、顧客から直接相談を受けてのプロの紹介や中古物件探しにも対応している。